明治期に西洋の軍事教練が入ってくる前まで、日本人は右手と右足を同時に出し、左手と左足を同時に出して歩く、いわゆるナンバ歩きという歩行法をしていたという話があるが、これは前々から胡散臭いと思っていた。
体重移動で一瞬の動作としては力が入ったり、速かったりするのだろうが、日常生活でこんな歩き方を全日本人がしていたわけがない。
大体特殊な歩き方を習ったからって日常動作を変えるか? 相撲を習ったら毎日摺り足で行動すんのかよ? 着物では自然にナンバ歩きになるとかいうけど落語家はナンバ歩きしてんのか? などと思っていたが結構このあやしげな論を信用しているような文章や言動を目や耳にする。
ずっとモヤモヤしていたが、この前証拠となりえそうな動画をみつけた。
それがこれ、Watch an Interesting Rare 1899 Footage Of Tokyo-Japan
https://www.youtube.com/watch?v=nm6P8v2yfLc
フランス人の映画発明者、リュミエール兄弟が1899年の東京を映した動画とのこと。
映像ではみんな着物を着て今と同じ歩き方をしている。やはり自分の考えは間違っていなかったようだ。
日本で軍事教練としての体育学科が始まったのは
明治 16 年( 1883 年 )の徴兵令改正に関連して文部省は明治 19 年( 1886 年)に学校に 兵式体操導入を決定した。
と国士舘大学の資料 日本の小学校体育の変遷と国民性 〜諸外国の体育スポーツ
http://homepage.kokushikan.ac.jp/hiroshi/semi-1/img/file4.pdf
に書いてある。 1886年から始まった授業で1899年には大人も子供も歩き方を変えるわけがない。
明治元年が1868年なので、映像に映っている大人は江戸時代の生まれだ。
そして日本で徴兵令が施行されたのは明治6年(1873年)で条件は、
男子は満20歳で徴兵検査を受け、検査合格者の中から抽選で「常備軍」の兵役に3年間服させることとした。
20歳の中から審査して合格、さらにその中から抽選だ。
しかも徴兵の実態は、地方の農家の二男、三男ばかりが徴兵に取られたらしく、各地で反対の一揆も起こっている。
この映像は東京だ。
とここまで書いたが、ちょっとこの映像が完全な証拠とは言えないかもしれない記述を検索して見つけてしまった。
この映像の10年前、明治22年 (1889年)に徴兵令の大改正がされ、その中身が日本国民なら17~40歳の男子は免除者以外全員、兵役の義務がありますよ。というもの。
映像の皆さんは全員兵役済みでそこで行進を習ったから全員歩き方が現在と同じってこと???
いやいや、幼少時に習ったらならまだしも、大人になって行進習ったからって日常の歩き方変えるかね?
この動画があと10年前か、もっと高解像度か、老人もしくは婦人が映っていれば、判別できれば、はっきりと否定する証拠になったのに!!!
悔しい……悔しいよう。
はっきりとナンバ歩きを否定したかったのに……。